生牡蠣には、「シャブリ」。
オイスターバーなどで生牡蠣を頼んだ時、シャブリの白ワインをおすすめされた経験がある方も多いのではないでしょうか。
ワイン愛好家の中では、“生牡蠣にはシャブリは合う”と認識されているように、この組み合せは定番と思われているようです。
なぜ、生牡蠣といえばシャブリの白ワインなのでしょうか。
ここでは、その疑問を解説していきます。
シャブリとは?
そもそも、「シャブリ」とは何なのでしょうか。
シャブリは、フランス・ブルゴーニュ地方の北部に位置するヨンヌ県の都市オーセール近郊のワイン産地。このシャブリ地区で造られているワインが、「シャブリ」と呼ばれています。
中世ローマ時代よりブドウ造りが始まったといわれるほどに古くから優れた白ワインを生み出す場所。今もなおフランスを代表する白ワインの銘醸地として有名です。
ちなみに、シャブリの白ワインに使用されている品種は、シャルドネという白ブドウ。ほかの品種をブレンドせず、シャルドネ単体で仕込まれることから産地(地域や畑)や生産者によって個性が変わってくるところが魅力のひとつです。
しかし、シャブリと一口に言ってもその全てが同じワインではありません。
ここからはシャブリにはどのような種類があるのかお伝えしていきましょう。
シャブリの種類
フランスには各ワイン産地に対応した原産地呼称制度(A.O.C.・A.O.P.など)が存在しています。シャブリ地区も例外ではなく、この原産地呼称制度によってカテゴリがいくつかわけられています。
シャブリの白ワインを選ぶ際、とても役立つ知識ですのでぜひ覚えておきましょう。
・シャブリ・グラン・クリュ
シャブリ・グラン・クリュは、シャブリの中でも最高峰に位置するカテゴリ。
シャブリ地区のスラン川右岸に広がる地域で、ここの7つのクリマ(ブルゴーニュ独特の区画の意味)がシャブリ・グラン・クリュに認められています。
この7つのクリマのどこで白ワインが造られたとしても、ワインは「シャブリ・グラン・クリュ」と名乗ることができます。
シャブリらしい繊細な風味とミネラル感、切れ味鋭い酸など、シャルドネという品種から造られる白ワインの基本ともいえる味わいが特徴。
もちろん、クリマや生産者によって個性のある味わいですので、飲み比べして個性を探るというのも面白いでしょう。
・シャブリ・プルミエ・クリュ
プルミエはフランス語で、「1級」を意味する言葉。シャブリ・グラン・クリュが特級という意味合いですので、その下のカテゴリが、シャブリ・プルミエ・クリュとなります。
(とても高品質です)シャブリ・プルミエ・クリュは、グラン・クリュを囲むように広がる畑、その対岸の一部に位置する畑で造られている白ワインが名乗ることができます。
40ほどのクリマがシャブリ・プルミエ・クリュに認められており、シャブリらしいフレッシュさとミネラル感、コクが楽しめるバランスのよい白ワインとして知られています。
・シャブリ
グラン・クリュ、プルミエ・クリュを囲むように位置している畑で造られている白ワインの多くが、シャブリ。
厳密には「A.O.C シャブリ」と呼ばれている白ワインで、シャブリ地区の中でも多く生産されているカテゴリです。
日本国内でも多く出会う機会が多いカテゴリのワインで、オイスターバーやワインにこだわる和食店、バルなどでも多く見受けられます。
シャブリ・グラン・クリュ(特級)、シャブリ・プルミエ・クリュ(1級)といったカテゴリではなく、シャブリは「村名」カテゴリ。
味わいは柑橘のニュアンスや白い花、ミネラル感、酸などがほどよいバランスにまとまっています。
上位カテゴリがやや個性を出すタイプとしたら、「シャブリ」はシンプルな味わいでフードフレンドリーなタイプと考えることができるでしょう。
・プティ・シャブリ
前述した3つのカテゴリと土壌組成が違うところで造られている白ワインが、プティ・シャブリです。後述するようにシャブリの特徴は、「キンメリジャン」と呼ばれる個性的な土壌組成をしているのですが、シャブリ地区内でそうでない土壌の場所があります。
そういった場所で造られたワインの場合、プティ・シャブリというカテゴリとなります。
ポートランディアン期の土壌が主体といわれていますが、上質なものは「シャブリ」のカテゴリに入っているようです。シャブリで造られているワインの中では、カジュアルで飲みやすくフルーティーさと酸のバランスがよいところが特徴です。
生牡蠣と合うといわれている理由
シャブリにはさまざまな種類があることをお伝えしました。しかし、なぜ生牡蠣と合うと語り継がれているのでしょうか。
じつは、その本当の理由は未だ分かっておらず、さまざまな説が存在しているのが実際です。ここからは、シャブリが牡蠣に合うといわれている理由について解説していきます。
・キンメリジャン
“シャブリといえば、生牡蠣”。こういわれている理由のひとつが、シャブリに広がる「キンメリジャン」と呼ばれている土壌組成です。
シャブリ地区は、小さな牡蠣の化石などを含む独特な土壌といわれており、約1億5,000万年前(ジュラ紀後期)のキンメリジャン期の土壌が中心といわれています。
つまり、石灰岩や泥灰岩、牡蠣の化石…など、「かつては海だった」という理由から海のエキスを持った白ワインが生まれることが牡蠣との相性を良くしている…という説です。
実際、シャブリ地区は冷涼で酸が際立ったワインができやすく、ミネラル感が特徴なものが少なくありません。あくまで仮説ではありますが、土壌との親和性がこういった説を生み出したと考えられています。
・白ワインが殺菌する
キンメリジャン土壌が生牡蠣との相性を良くしている、という科学的根拠はないといわれています。そのため、他の説を提唱している科学者も少なくありません。そのひとつが、白ワインの殺菌作用です。
白ワインには殺菌作用があることが証明されており、昔から生牡蠣を食べていたシャブリ地区(フランス全体)の人たちがそれを経験則的に知っていた。
今よりも衛生面へのケアが疎かにならざるを得なかった当時に、白ワインと一緒に合わせることで安心して生牡蠣を楽しめるという説もあります。どれが正解か間違いなのかはわかりません。
だからこそシャブリだけでなく、ほかの白ワインも生牡蠣と合うといわれているものも多いので、さまざまなペアリングに挑戦してみるのも楽しいのではないでしょうか。
牡蠣以外のマリアージュは?
「シャブリと牡蠣」のペアリングのイメージが強烈であることから、ほかのマリアージュを考えられない…という方もいるでしょう。シャブリは、牡蠣専門のワインではなく幅広い料理に合わせられる万能白ワインです。
シャブリの特徴は、柑橘を思わせる香りと白い花、心地よいフレッシュな酸、ミネラル感と長い余韻です。これらの特徴はさまざまな食事とのマリアージュの幅を広げます。
- 白身魚のカルパッチョ
- レモン風味のサラダ
- グラタン
- 塩気を感じるチーズ
日本では和食店でシャブリが使われていることが多いですが、柚子をあしらったもの、昆布〆、塩焼きの魚にレモンを搾ったものなど相性が良いでしょう。
シャブリとのマリアージュを楽しむ場合、牡蠣だけにこだわらずさまざまな料理とペアリングに挑戦してみましょう。
生牡蠣だけではないシャブリの魅力!
牡蠣を食べる時には、シャブリの白ワイン。まず、白ワインと牡蠣の相性はワインを知る上で基本的な定説です。
しかし、その相性を深読みすることでなぜそうなのか、本当にそうなのか…という部分が見えてきたと思います。
今回お伝えした情報を基本に、ご自宅などでも牡蠣とシャブリを合わせてみましょう。