ワインの本場といえばフランスをはじめとしたヨーロッパ圏の産地です。
また、近年ではカリフォルニアやオーストラリア、チリなど、「新世界」と呼ばれているワイン産地の品質も向上しており注目されています。
そんな中、一部のワインファンから注目されている新しい産地が、日本です。
「日本でワイン造りは難しい」と言われ続けてきたものの、近年高いレベルのワインを生産者も増加しています。
ここでは、ざっくりとワイン産地としての日本の特徴をお伝えします。
主なワイン産地
日本は、高温多湿な気候である上に土壌組成も豊かなことから、ヨーロッパに比べるとワイン用ブドウ栽培には適していないといえます。
しかし、各産地や生産者の努力により近年土壌などの栽培環境が整えられ、質の高いワインを見受けられるようなってきました。
とくに質の高いワインを生産している産地がこれらです。
- 山梨 ワイン生産量日本一 甲州ブドウ発祥の地
- 長野 メルローやシャルドネ、メルローなど海外品種栽培に適した地
- 山形 寒暖の差が大きく、ワイン造りに適した環境
- 北海道 梅雨がなく、冷涼な産地であることからドイツ系、ブルゴーニュ系品種が有名
ただし日本の場合、北は北海道、南は宮崎までワイン産地が広がっており、今やワイナリーは300を超える数になっているといわれています。
ブドウ栽培に適した産地がワイン産地に
ワイナリー数が増えているとはいえ、前述したようにワインに適したブドウを栽培するためには、それなりに適した産地でないといけません。
各県にワイナリーがぽつぽつできていますが、前述した「山梨・長野・山形・北海道」はワイナリーが集中しています。
まず、高温多湿の環境ではブドウが病気になりやすくなることから、降雨量が少ないという条件は必至です。
さらにブドウの色づきに関連する昼夜の寒暖差も重要ですので、結果的に産地は内陸に集中していったという理由が考えられます。
フランスやアメリカなどでも、質の高いブドウ栽培ができる環境にワイナリーが集中していますし、事実そういった産地のワインは高く評価されているようです。
日本で有名なワイン産地はワイン用ブドウが栽培しやすい環境が整っていた、と覚えておくとよいでしょう。
技術の発展と日本ワインらしい味わいへの挑戦
ワイン用ブドウに適しているとはいえ、やはり日本ワインの評価は数年前までは低いものでした。
海外に比べると香りが弱かったり、ラブルスカ種を使ったり、パワーがないなど、“物足りないワイン”ばかりだったからでしょう。
しかし近年、和食が世界的に注目されると共に、繊細な味わいこそ日本人の味という形で、日本でしか造ることができないピュアでクリーンなワイン造りに生産者全体がシフトし始めました。
また、ワイン醸造家や栽培家が海外で修行を積んだり、最新鋭の技術や科学を駆使するなど、技術力が高まっていったこともポイントでしょう。
売れ残った生食用のくずブドウを使ってワインを造った時代は終わり、ワインのためのブドウ栽培&醸造をするようになったことで、今日本ワインは高い評価を獲得しているのです。
利用されているブドウ品種
日本は、まだフランスのA.O.C.など徹底したワイン法が定められていないことから、この産地は絶対にこの味の傾向&品種を利用している…ということがいえません。
ただ、全体的な特徴として捉えられるのは、日本特有のブドウ品種を利用しているところです。
シャルドネ、カベルネ・ソーヴィニヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、ケルナー、アルバリーニョなど、多種多様な国際品種も栽培されていますが、ハイブリッドや固有種、生食用ブドウが多く使用されています。
例えば、山梨県で多く見かける甲州。
日本オリジナルとして世界でも認められているブドウであり、近年ソーヴィニヨン・ブランに近い柑橘の香りを持っていることも発見されています。
樽熟成、シュール・リー、オレンジワインなど、幅広いスタイルを生み出すことができる万能選手といっていいでしょう。
そして、マスカット・ベーリーA。
川上善兵衛氏がベーリーとマスカット・ハンブルグといった品種をかけあわせて生み出したハイブリッド品種であり、今や日本を代表する赤ワイン用品種として利用されています。(基本は生食用で、イチゴや綿飴などのニュアンスがある)
ほか、北海道の池田町独自品種の山幸や長野の竜眼、デラウェアやコンコードといった生食用ブドウを使う生産者も少なくありません。
ルールが厳しく定められてるわけではないからこそ、自由で日本でしか味わえないワインが生まれています。
全く新しいワインの世界に飛び込みたい、と思っている輸入ワイン好きは、日本ワインの世界を知るのもよいかもしれませんね。
和食とも合わせやすく楽しい!
全てが全てとはいえませんが、日本ワインの多くは和食との相性がよく、輸入ワインでは難しい組み合わせを難なくこなします。
ウニの寿司と甲州、マスカット・ベーリーAとすき焼き、長野のシャルドネとふきのとうの天ぷらなど、とにかく和食と合わせるなら日本ワインの右に出るものはありません。
一昔前の日本のワインはたしかに物足りなかったり、“おみやげワイン”の域を出ないものも多くありました。
しかし、今は違います。
フランスワイン、カリフォルニアワインだけでなく、シチュエーションに合わせて日本ワインも仲間入りさせてみてはいかがでしょうか。