フランスワインを覚えるために、「A.O.C.(原産地統制名称)」を勉強された方は多いかもしれません。
また、フランス同様にイタリアやスペイン、ポルトガルも「D.O.C.」などを覚える際も原産地統制名称を軸にしていくのが一般的です。
しかし、ヨーロッパを代表する産地のひとつである「ドイツ」の場合、少しほかヨーロッパの産地のそれとは違っており、複雑でよくわからない…という声をよく耳にします。
ここでは、ドイツにおけるワインの品質区分や格付けの基本を紹介していきましょう。
ドイツの品質区分は大きくわけて2つ
ドイツは、古くからブドウ栽培・生産が盛んな国で、白ワインや甘口ワインでとても有名です。
しかし、ワインの品質区分が徹底していることから素人目にはわかりにくく、ドイツワインを選ぶ際のポイントが産地や品種に頼るしかない…というシチュエーションも少なくありません。
まず、ドイツワインの品質区分は大きく分けて二つあります。
- 地理的表示なしワイン
- 地理的表示付きワイン
それぞれ簡単に解説していきましょう。
地理的表示なしワイン
カジュアルなドイツワインの多くが、地理的表示なしワインと区分されています。
地理的表示なしワインはその名の通り「地理的」な表示の無いワインではありますが、条件は「ドイツ国内で収穫されたブドウを100%使用して造られていること」。
地理的表示なしは、ドイチャー・ヴァインと呼ばれます。
ブドウ品種やヴィンテージを記載することはできるので、ドイツワインであることは間違いありません。
他国のブドウを使用してドイツ国内で生産された…というものではないので安心して購入いただけます。
地理的表示付きワイン
地理的表示付きワインは、ドイツ国内のワイン法により三つのカテゴリにわけられています。
- ラントヴァイン
- Q.b.A.(クー・ベー・アー)
- プレディカーツヴァイン
それぞれ解説します。
ラントヴァイン
ラントヴァインは、指定されている26の地域で栽培・収穫されたブドウを85%以上使用して造られているドイツ産ワインのことです。
Q.b.A.
Q.b.A.は、「クヴァリテーツヴァイン ベシュティムター アンバウゲビーテ」の略で、13の特定栽培地域の中の1つの地域で栽培・収穫されたブドウから造られたワインのこと。
甘口ワインも多いことから、最低アルコール度数が7%というところが特徴的です。
プレディカーツヴァイン
ドイツワインの最高峰といわれているカテゴリーが、プレディカーツヴァインです。
ドイツは、ブドウ栽培地域としてはたいへん冷涼な産地であることから甘口ワインの生産が多く、甘口ワインが最高カテゴリとして扱われています。
プレディカーツヴァインは、発酵前のブドウ果汁の糖度によって6つの格付けが存在します。
- カビネット
- シュペトレーゼ
- アウスレーゼ
- ベーレンアウスレーゼ
- アイスヴァイン
- トロッケンベーレンアウスレーゼ
とくにトロッケンベーレンアウスレーゼは貴腐ブドウから造られている世界三大貴腐ワインのひとつで、1本100万円に迫るものなどもある超高級ワインでもあります。
VDP
前述したように、ドイツは甘口ワインが最高峰のカテゴリという品質区分になっていますが、甘口ワインと辛口ワインの格付けも存在しています。
それが、VDP(ドイツ・プレディカーツワイン生産者協会)が独自に制定している格付けです。
ボトルに鷲のマークがつけられており、それがVDPのワインである証となります。
格付けの範囲や条件などは少しずつ変化しているようですが、現在では4つの格付けが存在しています。
- VDP. グーツワイン
- VDP. オルツワイン
- VDP. エアステ・ラーゲ
- VDP. グローセ・ラーゲ
ちなみに、「VDP. グローセ・ラーゲ」が最高格付けであり、特級畑のブドウのみから造られたワインとなります。
また、辛口ワインの場合「VDP. グローセス・ゲヴェックス」という特別な肩書きとなるため、ドイツにおける最高格付けの辛口ワインを選ぶのであれば、「VDP. グローセス・ゲヴェックス」がその証明になるということです。
ちなみに、VDPの格付けは所有畑が基準となっており、ざっくりといえば「ブルゴーニュ的な格付け」となります。
そもそも、この格付けを得るためにはVDPの会員になることが条件であるため、まだまだドイツワイン全体での割合は多くありません。
これから増えていくカテゴリであることは間違いなさそうなので、ぜひVDPの動向にも注目し続けてみてはいかがでしょうか。
難しいけれどわかりやすいドイツワイン
ドイツワインは、地理的表示付きワインの区画が細かく区分されていたり、ボトルに細かく公的検査合格番号などが配されているなど一見複雑です。
しかし、逆に捉えれば出自などがハッキリと分かることから、覚えてしまえば最も分かりやすい品質区分を採用しているワイン生産国と考えることもできるでしょう。
ドイツワインは、日本でも人気の高いワインです。
ぜひ、その基本だけでも覚えておくと今後のワイン選びに役立つことでしょう。