ワインは世界中で造られていますが、多くの方はフランスやイタリア、スペイン、ドイツといった旧世界ワイン。
そしてアメリカやチリ、オーストラリアなどの新世界ワインのイメージを強く持っているかもしれません。
しかし、東欧の国もワイン生産国としては歴史が古く、日本でも少しずつ輸入量が増加傾向にあります。
今回、東欧ワインの中でもとくに人気の高いブルガリアワインについてお伝えしていきましょう。
ブルガリアワインの歴史
ブルガリアはヨーロッパの南東部、バルカン半島に位置するワイン産地です。
紀元前1000年から800年の間に存在したトラキア人(ブルガリア人の祖先)がワイン製造をしていたという文献が残っているなど、古くからワインが造られていた歴史あるワイン産地として知られています。
ブルガリアのワイン産業が形成されたのは1950年代頃ですが、大きく発展したのは1960年代から70年代にかけて。
カリフォルニアデイビス校からやってきた教授などによる醸造設備及び技術の改善がおこなわれ、その後大成功を収めるようになったといいます。
1992年頃には民主化の波を受けて民間ワイナリー企業も増加。
今では東欧の一大ワイン産地として、世界はもちろん日本市場にも仕入れられています。
ブルガリアワインの気候風土やブドウ品種
ブルガリアはさまざまな土壌がありますが、淡褐色土壌や栗色土壌が主な土質とされています。
山地が多く、エーゲ海やアドリア海、黒海の影響を制限することから、同緯度の南フランスなどと比較すると冷涼産地となっているようです。
さて、そんなブルガリアではカベルネ・ソーヴィニヨンなど国際品種が多く栽培されていますが、古代からの土着品種も積極的に栽培されています。
黒ブドウ
・ガムザ
ラズベリーのような風味を持つ黒ブドウ。酸度が高くタンニンは穏やか。
・パミッド
ブルガリアでも多く栽培されている品種。軽快なカジュアルタイプのワインを生み出すことで知られており、早飲みに適している。
・マヴルッド
黒系果実の香りやチョコレート、タンニンもしっかりとしており熟成によってスパイシーな風味も出るといわれている品種。高級ワインになるといわれている。
白ブドウ
・レッド・ミスケット
リンゴやハチミツ、ハーブのアロマを持つ高級品種。酸が穏やかであることから、一般的にはブレンドされている。
・ディミャト
しっかりと熟す、ブルガリア全土で栽培されている白ブドウ。白桃を思わせる香りがあり、酸度も高くフレッシュ&フルーティーに仕立てられることが多い。
また、ブルガリアには「ラキア」と呼ばれているブランデーがよく飲まれており、グラッパのような製法から造られています。
ブルガリアワインの品質分類
ブルガリアにもワイン法と品質分類が存在しています。
テーブルワインが全体の7割以上を占めていますが、ペイドックに相当する原産地表示付きテーブルワインは全体の約2割弱。
カジュルなカテゴリの中でも一部、品質を意識したものが多く出回っているようです。
一方、特定地区で造られた上質ワインはこれら品質分類で分けられています。
・GAO
・GADO
イタリアやスペインのDOCやDOCGのようなカテゴリであるこれらワインは、全体の1割に満たないといわれているようです。
ただしブルガリアのトップワインは品質分類を気にせずに造られたものもあり、カテゴリはテーブルワインでありながら世界的に認められているものなども多いことで知られています。
ブルガリアワインの主な産地
ブルガリアの主なワイン産地についてまとめてみました。
ワイン造りの歴史は古いもののワイナリー数は比較的少なく、一部バルクワインを生産する生産者なども多いようです。
・ドナウ平原
ドナウ河からバルカン山脈にかけて広がるワイン産地。ルセやスヒンドル、ヴィンデンなどのワイナリーが位置しています。
・ストゥルマ谷
メルニック、サンダンスキ周辺のブルガリア南西部のワイン産地。ダミアニツァ、ブラゴエヴグラトなどGADOに認定されているワインがあります。
・バルカン山脈山麓
ブルガリア中央部のワイン産地。幅広いブドウ品種から多種多様なワインが生産される産地です。
・トラキア平原
ブルガリア南部の広いワイン産地。ブルガリアの固有品種も一部で栽培されており、高品質なワインも多く生産されています。ペルシティツァやハルソヴォ、スタラ・ザゴラなどにGADOが多く存在しているようです。
・黒海沿岸
ブルガリア東部の黒海沿岸もワイン産地として有名です。収穫期の降雨量が少なく、固有品種から国際品種など多種多様な品種が栽培されています。
シュメンやポモリエ、ヴァルナなどにGADOがあります。
ブルガリアワインは今後人気の予感!
飲みやすく、さらに価格もカジュアルなことから日本でもブルガリアワインが人気を博し始めています。
まだまだ認知度は低いものの、今後より注目されることは間違いなさそうです。
まずは基礎から学び、その味わいを確かめながら深くブルガリアワインを学んでみてはいかがでしょうか。