ワイン造りに欠かすことができないアイテムのひとつが、「樽」。
赤ワインはもちろん、一部の白ワインやロゼワイン、スパークリングワインの醸造で用いられる重要なアイテムです。
微量な酸素接触や樽由来の成分による影響など、樽がワインに与える影響の多さは計り知れないものがあります。
そんな樽ですが、ワインに使用される樽はどのような種類を使い、どのように製造されているのかご存知でしょうか。
ここでは、ワインに使用される樽の基礎知識をご紹介しましょう。
オーク樽が使用されている理由
ワインに使用されている樽は、主にオーク樽と呼ばれています。
木材でどんな種類でも良さそうですが、ワイン造りにオーク樽が用いられている理由がこちらです。
・頑丈
・加工がしやすい
・水を漏らさない(チロースと呼ばれる構造が関連)
・適度な酸素透過性
・樽由来の成分がワインを良い方向へ導く
など、オーク樽はワインを保存したり熟成をさせる上で理想的なスペックを兼ね備えているのです。
ワインに使用されている樽の種類
オーク樽と一口にいってもその種類はさまざまです。
ワイン製造の現場では、大きく分けて二種類のオーク樽が使用されています。
・フランス産
・アメリカ産
さらに、フランス産のオーク樽は、ヨーロッパナラ(イングリッシュオーク)とツクバネガシ(セシルオーク)が主要であり、「アリエ・トロンセ・ヌヴェール」という3種類の樽材が有名です。
アメリカ産のオーク樽は、ホワイトオークという種類が主に使用されています。
それぞれの特徴をまとめると…
・ヨーロッパナラ=香りは控えめながら抽出可能なポリフェノールの含有量が多い。
・ツクバネガシ=ストラクチャーは控えめながら、香りが強め。
・ホワイトオーク=香気成分のオークラクトンの量が膨大。フェノール含有量は少ない。
生産者の哲学にもよりますが、エレガントなテイストを目指す高級ワインはフランス産オーク樽が使用されている傾向にあるようです。
オーク樽ができるまで
樽熟成を経たワインの特徴は何となく想像できるかもしれませんが、オーク樽がどのように作られているのか…というのは想像したことの無い方も多いかもしれません。
そもそも、ワインに使用されているオーク樽は、どのようなプロセスを経て製造されているのでしょうか。
簡単に工程をまとめてみました。
・樽板作り
・乾燥
・樽の形になるように樽板を並べる
・樽をトーストする(火あぶり)
・金属性の“たが”をはめ仕上げる
この中でもとくに押さえておきたいポイントを解説してきましょう。
樽材作りについて
ワインも同様ですが、オーク樽も元となる原料にこだわることが品質の高い製品を生み出すポイントです。
そのため、業者は樽材作りをとても大切にしていると言います。
主に樽材に使用されるのは頑丈なことで知られている木の幹の中心部であり、この部分が柾目になるように割られます。
ちなみにオーク樽にはチロースという成分が含まれており、多ければ多いほど頑丈なのだそう。
アメリカンオークは大量に含まれていることからのこぎりが使用しても壊れないのですが、フランス産のオーク樽はチロースが少ないため繊細な作業に。
フランス産のオーク樽の木を割る作業がとても大変であることから、それが理由で高額になってしまうとも言われているようです。
乾燥とトースト
樽材が完成したすぐに組み立て…となりません。
一般的に樽材は、樽が使用される環境の湿度に合わせるために乾燥の工程を経ることになっています。
2、3年樽材を乾燥させることで、苦みに関連するクマリンが減ったりエラジンタンニンも減り、丁字の香りに由来するオイゲノールなどの香気成分が増加するそうです。
乾燥炉が使用されることもありますが、前述した効果が得られないことからワインに苦みなどを与えてしまうオーク樽になってしまうこともあるよう。
オーク樽を購入する際、乾燥の方法についても知っておくと良いものが選べそうです。
次に、トースト。
ウイスキー好きやバーボン好きの方であれば、樽のトースト具合に詳しいかもしれませんが、ワインに使用されるオーク樽でも重要なポイントとされています。
トーストとは、樽材の内面部を火であぶり樽の形に曲げるために行われる作業ですが、その焼き具合によってワインへの影響が変わると考えられているようです。
強くトーストすればワインの風味に強い影響を与えますし、控えめにすることで抽出される風味を抑えることも可能。
どれだけトーストされているか、というのもワインに使用する樽選びにおいて重要なポイントになるのです。
樽にもこだわる
ワインに使用されているオーク樽の基礎知識についてお伝えしました。
樽業者や素材、製造方法など、“ワインに使用できるオーク樽”といってもその個性は千差万別。
生産者が目指すワイン造りを成功させるためには、ブドウ選びや醸造テクニックだけでなく、“樽選び”も重要なのです。
品種別飲み比べもおもしろいですが、同じワインの樽別飲み比べなどもできたら面白いかもしれませんね。